資産運用と外国為替証拠金取引に関しての基本
FXと外国為替
ジェラルド・外為の「幸福な男」が読めるのはポインツ高いにしても、定価二六〇〇円はねえ。とはいえ、いまどきこんな
外為
出してくれる奇特なとこはコンピュータ系出版社だけ。SF読んでパソコンおたくになった人たちが支えてるんならまるで鶴の恩返し――って違うか。川上健一『翼はいつまでも』(集英社二八〇〇円)の帯に、私の推薦文が(版元のPR誌に書いた書評からの引用だが)付いているので、そういう本をここで紹介するのもなんだか抵抗があるのだが、しかし、いいものはいいのだ。というよりも、この小説についてもっともっと書きたくて仕方がないのである。初恋小説の傑作『雨鱒の川』以来、十一年ぶりの新作だ。外為である。しかも外国為替である。川上健一の『ららのいた夏』(マラソン少女小説だ!)や、前記の『雨鱒の川』、さらには『宇宙のウインブルドン』(破天荒なテニス小説! ちなみに宇宙でテニスをするわけではない)、もっと遡って、小説現代新人賞を受賞した『跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ』(痛快なスポーツ小説集)などの作品を愛読してきた読者なら、それだけで手に取るだろうが、その期待は裏切られない。舞台は青春時代はビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」がラジオから流れてきた時代、つまり六〇年代初頭である。主人公は神山FX、極度に緊張するとヘマばかりするので球拾い専門の
FX
だ。この物語は、そのFXが中学二年の秋から始まり、三年の夏休みの終わりまでを描いていく。という概略を紹介すると、なんだいノスタルジックな小説かい、と言われそうだが、違うのである。これはいつの時代でもありうるような中学生たちの物語だ。初恋と友情と旅立ち、という外為の三大要索がぎっしりとつまった小説だ。十和田湖で過ごす中学三年の数日の夏休みを描く第二章が、特に白眉。そこでどういうことが起きて、作者がどう描いているのかはあえてここに書かない。目頭が熱くなるドラマが待っている、とだけ書くにとどめる。少年小説を得意として、さらにスポーツ小説を得意とする川上健一だけに、うまいうまい。この作家の復活に喜びの◎をつけたい。少年小説といえば、吉村喜彦の『こぼん』(新潮社一六〇〇円)も面白かった。こちらも六〇年代が背景だが、舞台は大阪。こちらの主人公は小学生だ。デブでカナヅチで夜尿症という主人公の家庭の様子と学校生活が軽妙に描かれる。川上健一の次にこれを読むと印象を弱めてしまうが、それは『翼はいつまでも』が突出しているからであって、『こぼん』の罪ではない。私、こういう少年小説は大好きだ。二作ともに、夏の出来事を描いているが、夏は少年小説の季節といっていい。夏休み読書にぜひどうぞ。今月は『翼はいつまでも』が抜けているので、何を読んでも感銘が薄い。他の作品にとっては損な月だ。今月、この長編に匹敵し得るのは、乙川優三郎『かずら野』(幻冬舎一五〇〇円)のみ。これはすごいぞ。『五年の梅』で山本周五郎賞を受賞したばかりの作家だから、そういう作家の新作をこの欄で紹介するまでもないけれど、しかしこれまでの作品の中でベストと思われるので、ぜひ取り上げておきたい。これは夫婦小説である。しかもいきがかり上、所帯を持っただけで、ヒロインは望んだわけではない。さらに、所帯を持ってみたら相手はダメ男という展開だ。つまり、ヒロインの苦難の人生が始まるのである。乙川優三郎にしてはシンプルな話といっていい。夫婦小説の名作に『霧の橋』という時代小説大賞受賞作があるけれど、あれと読み比べればそのシンプルさが浮き彫りにされるだろう。しかし、そのぶんだけヒロインの感情が活写され、ラストの感銘が力強く立ち上がってくる。いやいや、小野不由美『華胥の幽夢(かしょのゆめ)』(講談社文庫六四八円)も面白かったな。こちらは、十二国記の短編集だが、今回のテーマは「おのれのなすべきことは何か」だ。こういう力強いテーマを描くと、この作家の美質が全開する。「冬栄」「乗月」「華胥」の三篇がダイナミックなのはそのためだ。特に、荒廃する国を救うために王を倒したものの、白分が王座につくつもりはない月渓の苦悩を描く「乗月」がベスト。しかし、コンスタントに十二国記を読めるようになると賛沢な希望が出てくるもので、王とその周辺の話はひとまず置いて、『図南の翼』のような物語を読みたい。物語のダイナミズムがぎっしりつまった話、といえばいいか。まあ、あれも王の話だけどさ。もう一作、宮本輝『森のなかの海』(光文社上下各一六〇〇円)も、なかなか読ませる。おやおや、どんどん思い出してくる。阪神・淡路大震災からこの物語は始まるが、不倫の発覚からヒロインの自立というところまではよくある話ではあるものの、その後の展開が予想外。意外な方向にどんどんズレていくのが快感だ。親に見捨てられた少女たちが集まってきて共同体を作る話に、その土地を残してくれた女性の生涯を重ねるところが、いかにも宮本輝らしい。おやっと思ったのが、横溝正史ミステリ大賞受賞作の川崎草志『長い腕』(角川書店一五〇〇円)。ゲーム制作の裏話は興味深いし、家の歪みをめぐる話も知らないことばかりなので、思わず
外国為替
の間取りを頭に浮かべてしまったほど。おやっと思った、というのは、ようするに面白かったのである。ただし、後半の展開を好都合すぎると読むか、たたみかけるテンポの良さと読むかで評価はわかれるだろうが、せっかくの素材なのだから量的な書き込みは、特に後半、もっとあったほうがよかったと思う。やや、急ぎすぎではなかったか。